お客さんからメール

前述の通り私は海外営業を担当していた。私の急な退職に対してお客さんは驚いていたが、「今までありがとう。」と言って送り出してくれた。みんな良い人達だった。

少しゆっくりして、さて新しい仕事でも、と思った矢先、私の担当していたある海外の会社の社長からメールが来た。この会社は私が辞めた会社の一番の得意先で、したがって東京に頻繁に訪れてミーティングをしていた。内容は「来週東京に行くから、ちょっと時間があれば出てこない?君には借りがある。君の働きをねぎらって飯をおごりたい。」と言うものだった。

自己都合で退職した私は失業保険が出ておらず、喜んで飯をおごってもらいに行った。会うなり「あの会社を辞めたのは、悪い選択じゃなかったかもな。付き合い長いけど、おかしいと思うところが一杯あるよ。」と言われた。その後とりあえず世間話などをしながら食べたり飲んだりし、さらに私が辞めた会社の悪口で盛り上がった。

この人が帰国した後、私のところにまたメールが来た。内容は「うちに来て働かないか?」と言うものだった。突然の事だったので心底驚いたが、聞いてみると私が辞めた後、まともにコミュニケーションが取れなくなってしまっていたらしい。

小さい会社だったので海外営業は上司と私ともう一人という三人で行っていた訳だが、実務は私だった。もう一人の人はアシスタントの様な存在で雑用をする事が多く、上司は実務に興味がなかった。二人とも英語はできるが、私が抜ける時にもう一人英語のできる人を雇った。だが英語さえできれば何とかなるという上司の読みとは裏腹に、なんともならなかったらしい。引継ぎをしていないのだから当然といえば当然だが。

この二通目のメールが来るまでに私は転職先を見つけていた。それに私は一度海外に住んでいた事があるから、海外で働くというのがどれ程大変かも知っていた。さらに愛想を尽かして辞めた会社と関わりのある仕事をする、というのもなんとなく嫌だった。だからいい話だと思う反面、マイナス面もかなり見えて迷った。

だけど、本音で言うと私はもう一度日本を出たかった。その気持ちも手伝って承諾した。こうして私は海外に寝返り転職を決めた。